003「水」その1_一瞬の雲

003「水」その1_一瞬の雲

生き物はほぼ水

本格的な冬に入ったな...と思えることのひとつは

吐く息が白くなること。

すぐに消えてしまうこの現象を見ると

私の体の7割が水でできていることを思い出す。


このKANも1缶あたり91~93%は水でできている。

比較すると、ラガー系のビールも約92〜95%が水だ。


そうやって、成分と割合を想像してみると

水がとても大事なことに気づく。


スイカの水分量:92〜93%

カボチャの水分量:80〜88%

ゾウの水分量:60〜70%

テントウムシの水分量:60〜70%


おお...

生き物は、ほぼ水。


だったらいい水を

体にめぐらせて生きたいと思う。


その気持ちが、KANというブランドの根底にある。



製造所の湧水

私達は

広島で良い水が湧くところ、を探すことから始めた。


見つけたのは街の中心地から車で北に行くこと約1時間。

温泉の湧く湯来町の、太田川上流の川沿い。


蛍、鮎、鰻、オオサンショウウオが息づくその地域は、

携帯電話の電波はない。そもそも電気が引かれていない。

冬には膝下まで雪が積るが、交通量がほぼないので除雪車は来ない。

人が滞在するにはあまりにも過酷だけど、

そういう所に、良い水と空気がある。


地元の人と協力して40-50m井戸を掘ったら、

ほんとに水が湧いてきた。

美味しくて、なんの抵抗もなく身体に沁みてゆく。


この水で様々な身体に良い飲み物を創り、

缶に閉じ込め、世界中の人に届けたい。


ここで疑問も湧いてくる。

そもそも水の美味しさって何だ...?



水のみえない躍動

街に生まれて育つと、水は蛇口をひねれば出てくるもの。

鋪装された川があって、

数日にいちど雨が降り、

今日の終わりには風呂に入る。


それらの別々の認識の「水」は、

本来は分かち難く繋がっていて

姿、形を変えながら永遠に移動し続けている。

目の前の空気の中にも、

足の下の地中にも、

体の中にも水が存在して、

常に循環していることを想像してみてほしい。


まずは海の水。なぜ海水がなぜ塩辛いのかというと

少し酸性化した雨が地表に降ったあと大地や岩に触れ、

ミネラル、ナトリウム、カルシウムなどの

金属イオンと結びつきながら地表の川や地表の中を通って、

最終的に海に集まる。それが約40億年続いているからだ。


海水は、太陽光の熱などで蒸発するとき、

ミネラル分などは留まるので水は大気中に上昇し海に塩分が残る。

そしたら、海は塩辛くなり続けそうだけど

海中のミネラル分などにも固有の循環があるため、

海水の塩分濃度は約3.5%付近で安定できている。

(川の水は常に速く流れているので塩分濃度は0.05%以下)


そうして海から発生した真水に近い水蒸気は、

どんな生物からも見えない気体になる。

地形や気流の関係によって大気中を漂いながら上昇。

冷やされ、凝結がおき、大気中の微粒子にひっつき水滴 or 氷粒 に変わる。

この水滴が集まり、光を散乱して白く見えるようになったのが雲。


雲の中では、水滴と水滴が衝突し併合して大きくなり、

重力で支えられない大きさになったとき、雨として落下する。


雨や雪として落下する時に大気中の二酸化炭素を吸収し、

弱い酸性になった状態で大地や海に降り注ぐ。

大地に降り注いだ水の多くは、地表や地下を通って海に流れつき

残りは直接、あるいは植物の体内を通って蒸散し大気中にかえる。


これがざっくりした水循環の流れ。

「水の美味しさ」の秘密は、この中のどこかにあるんやろう。


更に詳しく調べていきたいと思うが、

途方もなさそうだと、苦笑いしながらため息をついた。


そういえば。

冬に吐く息が白くなるのは、肺に含まれている36℃前後の水蒸気が

外気に冷やされ、凝結し、水滴化したものが光を散乱している為。

気付いていないだけで、私だって一瞬の雲をつくることができるのだ。

私は、ほぼ水でできているから。


次回につづく



引用 / 「水の自然誌」E.C. Pielou

文章・写真 / 外 売募

 

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